2021年08月14日

畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート1

畳の表面を纏う「畳表」

畳表を大きく分けると、天然素材と工業製品に分類されます。

天然素材として代表的なものと言えば、日本人なら知らないとは言わないでください、

独特の香りを持つ「い草」です。

畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート1
畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート1

い草は国内においては、そのほとんどが熊本県で栽培されています。

昔は岡山や広島(備前、備後)などが主な産地でしたが、

現在では限りなく少なく、市場にはほぼ出回りません。

『畳は備後の五分縁で』

という落語の一節にもあるように、備後の畳は高級品とされていました。

ちなみに五分縁というのは畳縁の幅をあらわしており、

通常の半分近くの縁幅にすることにより、部屋がスッキリとして

粋だという表現をしています。

この備後の畳表は「地草(じぐさ)」と呼ばれますが

現代では余程の事がない限り、目にする事はありません。

畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート1
畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート1

また珍しいモノついでに『中継ぎ表』というものがあります。

い草の中央部分の良いところだけが表面に出るように織られたもので、

畳表の見た目も特徴的です。

畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート1

畳に仕上げると中央に影が見えますが、それが特徴とも言えます。

非常に希少なものですので、限られた場所でしか見ることはできないと思います。


珍しい物の話はここまでとして、一般的に使われている畳表の国内産であれば

ほぼ熊本産のい草が使われています。

熊本で収穫したい草を熊本で畳表として製織することが多いですが、

中には熊本のい草を広島や福岡などで製織している場合もあります。

畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート1

い草の生産と製織を分業で行なってる場合もありますが、

収穫したい草を自ら製織している割合の方が多いように思います。

収穫されたい草は、泥染めという工程を経て、い草の長さに合わせて分類されます。

同じ田んぼで収穫されたい草でも、品質にばらつきが出るため、ランク分けをし、

より良い物を高級品として製品にしていきます。

畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート1

熊本ブランドの中でも最も高級位とされているものに「ひのさらさ」があります。

「ひのさらさ」はひのみどりという品種のい草を使用した中で、最高ランクに分類されて

います。

ひのみどりという品種は、い草が細い特徴があります。

そのため、い草の太さのばらつきが少なくなり、畳表に仕上げた際にきれいに見えやすく

ブランドも確立しています。

ひのみどりのい草を使ったブランドとして、「ひのさらさ」「ひのさくら」「ひのさやか」

の3つの熊本JAブランドに分類されています。

ひのさらさが最高ランクに位置し、ひのさくら・ひのさやかの順に位置付けされています。

畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート1

熊本のJAがひのみどりの格付けをしているわけですが、ひのさらさを作れる生産者は

限られてきます。

い草の品質だけではなく、様々な基準を満たさないとひのさらさの認証は得られません。

ひのさくらやひのさやかについても同じことが言えますが、その基準がその分緩い

と思ってもらえればいいでしょう。

それだけ厳選されているため、お値段もそれなりにはなってしまいます。

またひのみどりは全てがこの3つのブランドに分類されているのではなく、

ノーブランドのものも存在します。

あくまで熊本JAのブランドということになりますので、JAを通っていなければ

ただのひのみどりという事になります。

その中にもひのさらさと同等クラスの物も存在はしますが、ブランドが確立された物

の方が判断しやすいのかもしれません。

今回は「ひのみどり」についてしか紹介できませんでしたが、

い草の品種はまだまだあります。

その他の品種についてはまた次回に…





Posted by kame at 07:20│Comments(0)
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