2021年09月18日

畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート2

い草にはいくつかの品種が存在しますが、前回は「ひのみどり」

についてお伝えしました。

この他の品種では「涼風」「夕凪」「ひのはるか」などがあります。

他に在来種の「いそなみ」や「せとなみ」などもまだありますが、

近年では少なくなっているため今回は省略します。


畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート2

この中で一番新しい品種が「涼風」で近年でよく見る品種といえるでしょう。

この涼風は5年程前から市場に出てきた品種であり、育てやすくなるように

品種改良された品種となります。

細くしなやかで美しいひのみどりと、太く丈夫な沖縄太イを交配させ生まれた

品種であるため、茎も丈夫で太めな特徴をもっています。

苗床で枯れやすいひのみどりの欠点と、太めのい草であるため打ち込みの本数を減らしても

丈夫な畳表に仕上がる利点を活かすことはできたように思います。

ただ余程草の選別をしたものは例外となりますが、褪色後に黒スジが出やすい傾向があります。

またい草が太めのため、草の太さのばらつきが出やすく、織りをきれいに見せるのが難しい

点も感じられます。

きれいさを求めるか、耐久性を求めるかで好みが分かれる点だと思います。


畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート2

夕凪はいそなみと沖縄太イS1の品種を交配し育成された品種であり、系統名では「有明5号」

となりますが、平成19年に「夕凪」と登録されました。

沖縄の太イの遺伝子を持ち合わせているため、丈夫な印象を受けます。

また部分変色茎も少ないと云われています。

部分変色茎とは、枯れたり養分が足りない、または栄養の取り過ぎなどによる原因から

色合いが変わってしまったい草を示します。

ガッチリとした耐久性の高い品種と言えると思います。


畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート2

最後にひのはるかですが、熊本3号と広系21002の品種を交配し育成された品種であり、

系統名「有明6号」平成19年に「ひのはるか」と登録されました。

い草の太さはひのみどりより太く、夕凪や涼風より細くソフトな手触りといった

印象を受けます。

草が長くなりやすい特徴がありますが、身入りをしながら長く育てるには技術がいるようです。

ただ長くだけ伸ばしてしまうと、身がスカスカになり耐久性が劣ります。

そのバランスがうまく取れると、見た目も美しく耐久性においても申し分ないい草が育ちます。

経年変化を見てもきれいに褪色していく印象を受けます。

耐久性については夕凪や涼風には劣るかと思いますが、身入りがしっかりしているものであれば、

全く問題はないかと思います。


今回はい草の品種についてお伝えしてきましたが、この品種だから良くてこの品種は良くない

とは一概には言えません。

良質ない草を育てる生産者は、その品種に合わせた育て方をしてできる限り良いものを

提供できるよう努力をし続けています。

作り手の思いが詰まったい草が、一番心地いいのかもしれませんね。

畳職人の『徒然不定期コラム』〜畳と伝統(畳表)パート2



Posted by kame at 11:50│Comments(0)
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